たるさんの部屋

         「監督」ではなく「教師」

 卒業式や送別会で「ありがとう」って言ってもらえること。
 卒業後もサッカーで「夢」を一緒に追いかけてくれること。
 教え子がうちを訪ねて来てくれること。これこそが教師冥利に尽きます。
 退職した今、各年代の卒業生らと食事会を持てる幸せ感満載。
 「監督」は結果(勝利優先)を出さないといけないから大変。
 結果が出ると「すごい監督」と周りから称賛を受けることもあります。
 だが自分がやったかのように勘違いや錯覚を起こし人格まで変わるのはイヤですね。
 結果が出なかったからと生き方まで否定されたくはない「たかがサッカーです」

 私は自分の<生き方=方針>を変えてまで勝ちたいとは思いません。
 少年前期(養成期)⇒少年後期、思春期(育成期)⇒高校、ユース(強化期)と
 輝く貴重な年代に寄り添えるだけで幸せなことです。
 養成、育成期間から心身共鍛えないといけない強化(ユース)年代で出会い
 子どもたちが成長した結果勝てればいいんです。

        <生き方、方針(コンセプト)>
 〔1〕やる気(モチベーション)
 チーム一体感(たるさんファミリー)を出す作るメニューを緻密に考え実施時期を
 うまく図り決めたら「やる!」チームのために粘り強く「やる!やり続ける」
 私は褒めたりアドバイスはほぼしない主義だが「努力」は見落とさない。
 日々の活動に手を抜かず「努力」する子どもを信じて疑わず接し「信頼関係」
 を作っておくことが「やる気」を起こさせる基本中の基本。
 そのためには繊細な気づきで一人一人を把握し日常生活(仕事、掃除、準備、整備、
 片付け、裏方、雑用、学校生活など)を見逃さずメモして記憶に留めておくこと。
 そして「利他の精神=チームのために」行動した時は褒め讃えて出場機会を与える。

 〔2〕気づき
 高校入学すでに「気づき」を持っている者(将来のキャプテン、主要ポジション候補)
 高校3年間(ミーテング、サッカーだより、経験、体験など)で気づく者。
 高校3年間で気づかない者は卒業後、社会で、家庭で、さまざまな人間関係の中で
 「ああ、これが高校時代にたるさんが言ってたことか、、、」と気づけばいい。
 サッカーを指導する「監督」より「気づき」を知らせる「教師」でいたい。

 〔3〕人知れず
 少年、Jrユース、ユース年代はスーパースターは不要。作るとチームが崩壊する。
 サッカーだけで注目を浴びて強化(高校、ユース年代)に来た選手は厄介。
 注目を受け目立ちたいと「自分が、、俺が、、」と一人よがりのプレーの連続。
 そういう奴は褒めないとしないし自分が注目されないとやらないパターン。
 (コーチ=権威)にはいい顔(機嫌をとり)擦り寄り裏表を作る人間になっていく。
 人知れず雑用や裏方の仕事はまずしない。こんな子がやがてサッカー生活を終え
 一般社会に出て大人になるとどうなるか?、、、、想像がつく。
 プライドをなくし「自己中」を消して「他者貢献」の大切さを説いてやりたい。
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 「監督」が結果を得るために子どもを特別扱いやゴネ得を許してはいけない。
 「監督」は結果を得るために子どもを利用してはいけない(プレイヤーズファースト)
 結果を出したいと思う「監督」より選手の将来を考え指導する「教師」でいたい。
 だが最近親も「子どもの将来を考えてるか?」と疑問に感じることが多くなった。
 親が目先の結果(勝利優先)を選ぶ傾向にあるとしたら、、、子どもたちの未来は?



                理不尽?

  各年代の卒業生らと食事会で出る話は、 、、「厳しかった、辛かった」という
 思いで話が中心。苦しかった時代を笑顔で話してる。
 出てくる話をまとめると、、、今思えばやはり「理不尽かな?」
 少年、中学とあまり技術が高くない者と多くの初心者を抱えたメンバーで高校で
 兵庫県でトップレベルと対等に戦うには「普通のことしていては、、、」
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 *思い出話は必ず「100本ダッシュ」。走ったことしか記憶にないとは、、、、

 *福崎高校のロードワーク。グランド使えない日、走り込みシーズンには
  高岡小往復(4km)か金剛城寺往復(8km)か甘地経由(16km)か、、、

 *市川高校への「練習試合へ行くぞ!」は地獄だったらしい。
  市川高へ走って(約5km)行って試合。あと坂ダッシュして走って帰る、、、、
  ある日あまりに帰りが遅いので車で様子を見にいくと街角で座り込んでいた。

 *新舞子での春強化合宿。御津中(約3km)までランニングで行って練習。
  練習後宿舎まで走って帰る。そのあと約200mの砂浜ロングダッシュ。
  「この手の中にいくつか小石がある。小石がなくなったら終わり」と本数知らせず
  全てが無くなり「終わり!」と言った途端全員砂浜に顔から伏した(47個)

 *校内合宿(練習練習開始夜中3時)
  「近所に迷惑かかるから静かに黙ってやれ!」だが朝方お巡りさんがやってきて
  「ポンポン音がし、タッタッタッと不気味な足音」と近所から苦情が。
   当時は私に質問できる状況になく食事会でやっと質問が「なぜ夜中3時?」
  私:「滝川二高が夜練習してる夢を見たから」

 *雨対策
  次の対戦は技術は関西でもトップクラスの相手。対戦日の天気予報は雨。
  カンカン照りでもないのに1週間グランドに水をまいて雨対策練習。
  当日大雨に「やった、勝った!」相手は当然イヤな顔。結果は勝った。

 *真夏の遠征(宿舎につくと必ず探すところ=坂ダッシュができる場所)
  練習マッチ前相手の監督が「たるさん、多くの生徒が手に何か巻いてるけど?」
  私:「いや、知らん」。聞くと試合の合間に坂ダッシュを「上半身も鍛えろ」
  坂ダッシュの合間に手押し車を指示。ところが猛暑の中アスファルト道路の坂の
  温度はハンパじゃない高温。結局原因は「やけど(火傷)」だった。

 *ランパス
  私の得意のメニューの一つ。2人組で延々走ってパスして走るランパス
  (ふだんは約10~15分)始めてしばらくして「電話です」と校内放送が。
  長話になりすっかりランパスを忘れていて戻るとまだやってる(約40分)
  「長電話で遅くなった、すまん」とは素直に謝れない30歳台半ばの頃。
  「休憩したら後半や」結局、前後半40分ハーフのランパス。

 *オールコートプレス(バスケットからヒント)
  前線からボールを追う(プレス)ボールに近い者は何人でも激しく寄せる。
  ボールがパスがされればまたそこへ猛ダッシュでアプローチして囲い込む。
  引いて下がって守る(リトリート)時間をかけ遅らせ守るのはタブー。
  うちのサッカーでない。それでバテるようなら走り込みを増やせばいい。
  強烈なプレスをかけ続ければ普通の高校生ならミスしてボールは取れるので。

 *縦一本
  試合開始後、相手監督が「蹴ってくるぞ」相手選手も「蹴るだけやで」と余裕。
  でもうちはそれしかできず延々シンプルに単純にゴールめがけて縦へ蹴る。
  後半になると相手が「また蹴ってきたぞ、、」と不安そうな声になっていく。
  相手が「バテた」と見るや「そろそろ、走らんかぇ」と外から檄。
  「残り時間ランパスや、やり切って終わるぞ」でさらにヒートアップ。
  雨やロースコアーのゲームや延長になれば「しめた!」もの。

 *起きろ!
  100本ダッシュや時には150本超ダッシュをすると足がつる、過呼吸など
  さまざまなことが。走り終えた後倒れ込みなぜか半笑いの顔で眠ってる。
  ある日、自転車で一人で帰るのがやばそうな者が出て車で送ることに。
  家の近くまで来たが家がわからず本人は寝込んでる「起きろ!」でもなかなか、、

 *吐くまで走れ!
  学校裏に墓地があり旧中学跡地まで「坂」が続く。ダッシュには最高の「坂」。
  本数を決めて「吐くぐらい走れ!」でノルマが終わったが「誰も吐いてない、
  やり直せ」すると墓場のそばの溝で吐く者が「バチあたり!墓の周りで吐くな」

 *整備とは居場所作り(手間をかけきれいにすると鍛練の場に愛着がわく)
  やせこけたグランド、小石が多く砂地も少なく固い。朝練整備後や休憩時間に
  石拾い(長い間やってると石が無くなり砂を拾っていたとの証言)をやる。
  鉄工所に依頼し重くて頑丈な鉄のトンボに代え整備しながら筋トレをさせる。
  トンボを押す者は(相撲の)股割りのように腰を深く落とし摺り足で下半身強化。
  引く者も時には鉄トンボに人を乗せて引き整備しながら上半身強化。

 *水抜きのチャンピオン
  グランド状態が悪いので少々の雨ですぐに水がたまる。だから「水抜き」は常。
  一致団結誰もさぼらないので「水抜き」があらゆる道具を駆使して異常に早い。
  年末に強豪高校が関東遠征帰りに練習試合にやってくるその日は薄氷が張ってる。
  スポンジを有るだけ広げ、足りない所は部室や教室からありったけの雑巾を敷く、
  それでも足りない。時間がない。すると自分のウインドブレーカーやピステを敷く。
  同時にベンチ、テント、真っ直ぐにライン。ものの見事に間に合わせた。
  2階体育教官室から進行状況を見て私も感動、少し胸が震えた。さすが!!

 *ライン一本のこだわり
  フェスティバルや大会などの会場準備、当番をよくわが校が担当にとお願いする。
  仕事をすると将来役に立つので。ある日私が到着するとまだ準備ができていない。
  主将らを呼び「何でこんなに遅いんじゃーー」「すみません、すぐにやります」
  そこへ中学校の顧問から「昨日の大会があり使ってもらおうとそのままに」
  しかし部員がライン一つ分(約5cm)内だと気づき全てを消して整備し引き直し、
  これには会場にいた先生方や大会役員らが感動されたが、うちにとってはふつう。
  ライン一つのこだわりは当然でしょ。それが仕事。社会に出て役に立つ。

 *怒ってもらえない。
  周りに見られない場所に集合し試合前の檄(ゲキ)ビンタ。
  久しぶりの食事会で「自分だけビンタされない日があり悲しかった」と語ってる。
  わめかれ怒鳴られ、メチャクチャやられた部員に「ええなあ~たるさんに本気で
  怒ってもらえて、、、」と羨ましく怒ってもらえない寂しさを口にしてましたが
  これって今の時代「体罰」ですよね。