たるさんの部屋

カウンセリングの技法「傾聴」

門を開けて耳を澄まして人の話を「聞く」
耳へんに十四の心と書いて「聴く」

相手(生徒)がどんな思いで話をしているか、、、しゃべっている内容もしかり
その思いの裏側は?心とはうらはらに、うまくしゃべれずに思いと違うことを言って
ないか?それこそ一つの話に十四通りの思いで「聴く」こと。
それを心して人と接して対応している。それが、、、

 

出会った生徒その(3)

「技法」なんかくそくらえ、、こっぱみじん、、、

〔A子〕はハキハキと明るく活動的。典型的な体育委員。
実際体育も安心して任せられて「集合!」で始まり「準備体操」ももう完璧。

その〔A子〕が二人きりで話がしたいと(教師と生徒が密室で二人きりでの会話は
原則禁止)でもそんなことは言ってられないことも多々あるもの。

体育館の西北側にある階段で。昼御飯終えて12時35分に会う約束。
話始めた〔A子〕。私はいつもの様に十四の心で、、、がしかし、、、
話の内容がきつい。「ええっ!!こんなことがこの子に起きていたとは、、、」
今までの長い教員生活で大概の経験をして少しのことでは驚かない私だが、、、

それはない。そんな大人が〔A子〕の周りにいるなんて、ましては肉親の中に、、、
話はじめてすぐに聞き入り、のめり込み、あまりにも〔A子〕が不びんで哀れで
涙が止まらない。止まらないどころか溢れ出てくる。。。
その時昼休み終了1時のチャイムが、、、、、
〔A子〕の心の奥にある叫び、魂に対して
私は一言も発せずに泣いているだけの25分間であった。
〔A子〕は立ち上がって
「たるさん、午後の授業が始まるから私行くな、ありがとう、聞いてくれて」

その後の〔A子〕は
いつも通りの明るく活発なまま。そのことに触れることもなく、、、
卒業式前日〔A子〕からの手紙が、、、
「たるさん、ありがとう。あの日はほんとうにうれしかった。親にも言えず
もちろん他の人や友だちにも言えなかった。
誰にも言えないことをたるさんに言えた。
たるさんは私に「ごめん、何も言えず、してやれず」と言ってくれたけど、、、
聞いてくれるだけでよかったんやで。
自分でがんばらなあかんことはわかっていたけど、、、
ただ聞いてほしかったんや。
明日から卒業やけどがんばれそうな気がする。ほんまにありがとう。」

カウンセリングの技法なんか全く通用せず。
〔A子〕どうしてるかな?幸せかな?

 
◆出会った生徒その(4)

「向き合ってるか!?」
〔A子〕は吹奏楽部。
進路希望は保育士か介護福祉士。
理由はおかあさんが少し耳が不自由でそばで助けることができたら、、、と
いうことでした。
〔A子家」は手話でなく学校や出掛ける時は向かい合ってゆっくりと
「い・っ・て・き・ま・す」帰るとまた向き合って「た・だ・い・ま」との約束。

おかあさんは〔A子〕の定期演奏会やコンサートによく行くそうです。
「今日はよかったで!」「今日はいまいちかな?」と感想を言うそうです。

私のバカな質問「えぇ、聞こえるの?」
「お・は・よ・う」から「お・や・す・み」まで一日に何度も向き合い我が子の
心情を察し喜怒哀楽を感じ取り、演奏中も楽しそうか乗っているか弾んでるか
読み取っておられるのでしょうね。

では我々はどうしてるのでしょう?
一日、いや何日も会話がない。帰ってきても別々に食事し自分の部屋に入り
携帯で過ごす。まるでホテル家族。
いつゆっくりと親子が、家族が、向かい合ったのでしょうか?

子どもの頃、早く伝えたくて喜び勇んで靴を脱ぎ捨てて
「なぁなぁ、おかあさん~聞いてぇー」と帰ってもおかあさんは仕事で不在。
居たとしても「もう、忙しいのに、、、あとにして」
抱っこして膝に乗せて今、今聞いてほしいのに。あとで聞いてくれたこともなく。。。

親に言っても聞いてはくれないと育った子どもはあきらめだんだん無口に。
子どもが成長し思春期になると親が急に「非行に走るとまずい」とあれこれと
(親の都合、タイミングで)聞きはじめるが子どもの反応は冷たく覚めてきてる。
「めんどう臭い、ほっといてくれ、うざいんじゃ、顔も見たくない」ってことに。
それでも「これだけ心配してるのに、、、」とひつこく、何度も何度も、、、
あげくは事情をしらない父親までがそんな時だけ「オヤジずら」して参戦。
子どもの態度に感情的になり「言ってはいけない禁句を」やってはいけない体罰も。

神様は人間に口は一つだが耳を二つも与えてくれたのに。
(しゃべることより2倍聴くようにしてくれているのに、、)
「あ~ぁ言い過ぎた」「また言ってしまった、言わなければよかった、、」と親。
「あの一言で。この親はあかんと思った」と子ども。
*言い過ぎて反省する話はあっても*聞きすぎて反省したって聞いたことないけど。

〔A子親子〕はどうしてるかな?、、おかあさんこそ「母の原点」ですね。
最高のカウンセラーです。